Press Release

標題:
5万m³級、2万3000m³級の大型液化CO2輸送船に対しAiPを発行
~CCSプロジェクトを支える液化CO2輸送船の安定的な供給の実現に向けて~

2024年9月18日

一般財団法人日本海事協会(ClassNK)は、川崎汽船株式会社、株式会社商船三井、日本シップヤード株式会社、日本郵船株式会社、三井物産株式会社、三菱商事株式会社、三菱造船株式会社が共同で開発を進める5万m³級および2万3000m³級の大型液化CO2輸送船に対し、基本設計承認(AiP)を発行しました。CCS*1プロジェクトが世界中で進行する中で、CO2を回収地から貯留地へと輸送する手段として、液化CO2輸送船の需要拡大が見込まれます。今回のAiPは、こうした需要に対して十分な数の液化CO2輸送船の供給を実現するために必須となる、船型の標準化に向けた一歩となります。当該証書の授与式は、ヒューストン(米国)で開催されている展示会「Gastech2024」にて行われました。

本会は本船の設計に対し、液化CO2やLNGなどの液化ガスをばら積貨物として輸送する船舶の構造および設備の安全要件が規定された国際規則であるIGCコードを取り入れた、本会鋼船規則「N編」に基づく審査を行い、所定の要件への適合を確認したことから、AiPを発行しました。

今回のAiPでは、審査範囲にタンク製造のボトルネックとなりうる溶接後熱処理(PWHT)*2を省略するためのEngineering Critical Assessment(ECA)*3と呼ばれる破壊力学的手法に基づいた貨物タンクの安全性評価プロセスを含んでいます。

脱炭素化に向けた先進的な取り組みに対し、本会は安全性評価をはじめとした貢献に引き続き努めてまいります。

以上

*1 Carbon dioxide Capture and Storage(CCS)
排出ガスなどに含まれるCO2を分離・回収し、地下の安定した地層の中に貯留する技術。

*2 溶接後熱処理(PWHT)
溶接部を溶接後に約600℃付近まで再加熱・保持し、溶接部の残留応力を低減する熱処理。約600℃付近の高温まで再加熱・保持することから、本処理は熱処理炉により行うことが一般的。タンクが大型化して熱処理炉に格納できない場合、加熱ヒータ等を用いた局部加熱によって処理することとなり、熱処理炉で実施する場合に比べて熱処理期間等が増大する可能性があり、タンク製造上のボトルネックとなることが懸念されている。

*3 Engineering Critical Assessment(ECA)
溶接部などで発見された欠陥が、構造物の設計寿命期間中に崩壊等の終局的な状態に至る現象を引き起こすか否かを破壊力学に基づく評価で判定する手法。

AiP授与式の様子(Gastech2024 日本海事協会ブースにおいて)

左から:
三井物産株式会社 執行役員 モビリティ第二本部長 白井 卓哉 様
川崎汽船株式会社 常務執行役員 金森 聡 様
株式会社商船三井 専務執行役員 梅村 尚 様
三菱造船株式会社 取締役社長 上田 伸 様
日本シップヤード株式会社 代表取締役社長 檜垣 清志 様
日本海事協会 副会長 菅 勇人
日本郵船株式会社 執行役員 横山 勉 様
三菱商事株式会社 インフラ・船舶・宇宙航空機 本部長 仲庭 幹人 様


基本設計承認(Approval in Principle: AiP)について:
設計初期の段階あるいは特定の実装対象船舶が決定する前の段階で、国際条約や船級規則など既存の規制に基づき、設計を審査し、要件への適合の証明として発行する。後工程における規制面の手戻りの防止や、船級登録時の審査時間の短縮につながるとともに、設計状況の対外的なアピールの技術的根拠として活用することが可能となる。詳細は本会ウェブサイト参照。

ClassNK - EOD

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