Press Release

標題:
4th IMO GHG Study(GHG4)最終報告書案の公表

2020年8月5日

IMO事務局は8月4日、温室効果ガス(GHG)排出量などに関する第4次調査報告書(4th GHG study, GHG4)案(1)を公表しました。日本海事協会(ClassNK)は、この調査事業を受託した10の大学・機関から構成される国際コンソーシアム(2)に、国内より海上・港湾・航空技術研究所 海上技術安全研究所(海技研)(3)と参加しています。調査を受託した国際コンソーシアムにおいては、本会技術研究所の職員がTechnical Directorとして、品質管理・保証の観点から報告全体をチェックする役割を担いました。

IMOは、2000年より3次にわたり、GHG排出量などに関する調査報告書を作成しており、今回が第4次報告書となります。本報告書は、IMOにおけるGHG政策の基礎データとなるものであり、削減目標のベース年(2008年)の排出量および炭素排出効率(Carbon Intensity, CI)の推定値、2050年までの排出量予測などが含まれています。今回の調査はCe Delft(オランダ)の主導する国際コンソーシアムが入札によって受託し、約半年の作業を経て、成果物として提出しました。本年秋以降に開催予定のMEPC75での審議の上、承認・最終化される予定です。

GHG4最終報告書案における要旨は次の通りです。なお、内容や結論についてはMEPC75の審議により、修正変更される可能性があります。(注:)内は、ClassNK/海技研による解釈を示しております。
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【2012-2018年のGHG排出量および炭素排出効率(CI)のトレンド】

  • 1990年から2018年までの主要指標の経年変化の動きをみると、リーマンショック以降、海上貿易量は順調に増加。
  • その一方で、IMOのGHG削減戦略では、2030年までに2008年比でCIを少なくとも40%改善することが掲げられている。そこで、今後のIMOの議論において、重要となるパラメータであるCIについては、2012-2018年の数値を4つの手法で計算。
  • 4つの手法による計算結果によると、ベース年となる2008年以降緩やかな改善が全てにおいて見られる。しかし、いずれも2008年比40%改善には2018年時点で至っていない。

【2019-2050年のGHG排出量予測】
  • IMOのGHG削減戦略では、2050年までに2008年比で国際海運部分についてのGHG排出量を少なくとも50%削減を目指すことが掲げられている。
  • 2050年までの国際海運部分のGHG排出量を予測するため、各地域のGDP、人口の伸び、またエネルギー消費量の予測から、主に4つの経済シナリオ/モデルで海上輸送量(トンマイル/年)を推定。2050年における海上輸送量(トンマイル/年)は、約8万から11万billion トンマイル/年の範囲と推定。(注:対2008年比で190%-290%の増加に相当)。
  • 2018年までの減速航行の効果、EEDI phase3までの規制効果 船舶の大型化およびボランタリーなCO2排出削減技術の導入などから、船隊平均の炭素排出効率(CI)は、2018年から2050年までに25%程度改善すると予測。(注:この改善幅は、2008年比50%程度に相当)。
  • このような海上輸送量の増加とCI改善を想定した場合、2050年の総CO2排出量(※漁船内航船を含む)は、2008年比90-130%と予測。(注:2050年の国際海運部分のCO2排出量は、2008年比で同じく90-130%の範囲。ゼロカーボン/カーボンニュートラル燃料の導入などの追加対策が導入されない限り、排出量50%以下を目指す上記の削減目標には到達しない、と予測)。
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この調査を通じて得られた知見は、船級協会としての本会のGHG削減への取り組みへも活用し、IMOのGHG削減目標の達成への貢献に努めます。また、日本国内における情報提供や、関連する基準整備・技術開発を引き続き実施してまいります。

以上

(*1) 報告書(MEPC 75/7/15)はIMODOCより入手可能。
https://docs.imo.org/

(*2) コンソーシアム参加組織
CE Delft
ClassNK(日本海事協会)
Dalian Maritime University
Fudan University
Manchester Metropolitan University
NMRI(海上・港湾・航空技術研究所 海上技術安全研究所)
Purdue University
The International Council on Clean Transportation
UMAS, University College London
University of São Paulo

(*3) 海上・港湾・航空技術研究所 海上技術安全研究所プレスリリースページ
https://www.nmri.go.jp/news/press/press_menu.html

ClassNK - EOD

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