NGH輸送船リガス船の貨物倉内ガス化の研究
研究実施期間:2011年09月01日 ~ 2012年08月31日
共同研究者
三井造船株式会社
研究の概要
世界のエネルギー需要は、途上国を中心とした急速な経済成長と人口増を背景に増大を続けており、石油・石炭・天然ガスといった化石燃料が一次エネルギー需要の大半を占めている。
なかでも天然ガスは環境負荷が小さいことから、近年ますますクリーンなエネルギーとして注目を浴びている。
一般的に化石燃料開発では、燃料田の規模で採算ラインが決まってくることが多く、中小規模の燃料田は多数あるものの事業化はほとんど見送られている。
天然ガスを低温・高圧状態で水と反応させることで保持温度を大幅に上昇させる輸送媒体となる天然ガスハイドレート(NGH, Natural Gas Hydrate)は、極低温設備が不要となるなどLNG(液化天然ガス)よりも経済的に有利であり、採算ラインから外れているガス田を商用ベースに乗せてくる可能性が期待されている。
NGHの海上輸送を担うNGH輸送船には、揚荷したNGHペレットを陸上でガス化することを前程とした機械式荷役装置を有するNGH輸送船と、輸送船内にガス化設備を有し、輸送船内でガス化したガスを需要家に供給するリガス輸送船がある。
リガス輸送船では、輸送船内にNGHのガス化設備が必要となる一方で、揚地でのNGHペレット貯蔵設備及びガス化設備の設置が不要となる特徴がある。
リガス輸送船は揚地にスペースのない地域でのNGHによる天然ガス利用を実現する重要な候補である。
平成22年度の「NGH輸送船緊急時船内ガス化の研究」では機械式荷役装置を有したNGH輸送船において、荷役装置が故障した場合の緊急時船内ガス化について研究を行った。
緊急時のガス化方式は、貨物倉内でガス化する方式をとるリガス輸送船への応用が可能であるが、リガス輸送船では需要側の要求に合わせて、ガス流量を一定の範囲内とすることが求められる。
そこで、貨物倉内ガス化方式のNGH輸送船において、ガス流量を一定の範囲内とする安定したガス化を行う貨物倉内ガス化方式を構築するために、本研究を実施する。
1. 模型試験の計画
上記の目標達成のために最適な模型形状・サイズ、および循環水投入方法・循環水流量・試験材料(NGHペレット)等の試験パラメータについて検討し、試験方案を作成する。
2. 試験対応計算
既存のシミュレーションプログラムにより、試験方案に対応した計算を実施し、模型試験の事前予測を行う。
3. 模型試験
貨物倉模型を作成し、貨物倉設計温度(-20℃)状況下にてガス化試験を行い、循環水の投入熱量を変化させた場合の発生ガス流量の変化をシミュレーションで模擬するためのデータを取得する。
4. 模型試験との比較及びシミュレーションプログラムの改良
事前シミュレーション結果と模型試験結果を比較し、必要であれば、モデル化を見直し、プログラムの改良・チューニング作業を行う。
5. 実船のシミュレーション
上記プログラムを用いて実船用のガス化計算を実施する。この計算により、実船の貨物倉のガス化をシミュレーションし、発生ガス流量を所定の範囲内で制御する方法を構築する。