その他研究開発(共同研究等)

フラックス入りワイヤによる水平すみ肉溶接ビードの外観形状の改善に関する研究

研究実施期間:2011年01月01日 ~ 2013年01月31日

共同研究者

株式会社新来島どっく
株式会社神戸製鋼所

研究の概要

 船舶海洋構造物の溶接施工において、1979年に細径化されたフラックス入りワイヤ(FCW)が市場に投入されたことで、作業性の良さから一気に普及が進み溶接材料のスタンダードとして定着している。また、船舶海洋構造物の溶接継手のなかで、大部分はすみ肉の溶接継手である。特に、水平すみ肉溶接の場合は専用のフラックス入りワイヤも開発・実用化され、高速性、耐プライマー性にも優れていることから、数多くの造船所で長年使用されている。
 一方で、船舶の分野では共通構造規則(CSR)およびバラストタンクの新塗装基準(PSPC)といった新たな規則が制定され、21世紀に入ってから対象船の建造が開始されている。CSRが適用されたことで相対的に鋼板が厚くなる傾向にあり、それに付随して水平すみ肉溶接部の最大脚長が6mm程度から8mm程度へと増加している。しかし、従来のFCWでは1パス施工で8mmの脚長は得られないことから2パス施工となる場合もあり、建造能率を低下させるというデメリットが顕在化している。また、大脚長化は溶接ビードの偏肉を招き、外観がPSPC基準から外れるケースが多くなり、手直しの工数がさらに増えていくことになる。
 本研究では、8mm程度の脚長の水平すみ肉の溶接ビード外観形状の改善と耐気孔性を両立させ、手直し作業時間を低減することにより建造効率を向上させると共に、船舶の品質向上にも寄与することを目的としている。

1. ビード形状評価技術の確立
 溶接後のビード形状を定量的に評価するために、レーザ式形状測定器を採用し、非破壊での定量評価を可能とする。

2. 塗装性とビード形状の関係把握
 ビード形状が塗装性に与える影響を調査するために、アンダカット、オーバラップ形状を有する溶接ビードを作製し、ブラスト・塗装を施した上で膜厚を計測する。

3. ビード形状とスラグ特性の関係把握
 FCWの特性である、溶接後に発生するスラグに着目し、主な特性値となる粘度と凝固温度について整理する。

4. 諸性能とバランスさせた成分系の抽出
 3.で最も良好な結果を得た条件をさらに精査することで、最適成分系のFCWを得る。

5. 最適成分系の塗装性
 4.のFCWから作製された溶接ビードに塗装を行い、性能評価を行う。

6. 現場での溶接作業性評価
 最適成分系のFCWを用いて、実際の造船工場現場で作業性の評価を行う。

研究成果報告書

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