ライザー設計におけるVIV評価手法の構築と知見の拡充
研究実施期間:2010年12月16日 ~ 2013年03月31日
共同研究者
三菱重工業株式会社
国立大学法人東京大学
独立行政法人海洋研究開発機構
研究の概要
ライザーは、石油開発や地球の科学調査において海底を掘削するために用いられる掘削ライザーと、海底油田から採取した原油を海面まで持ち上げるために用いられる生産ライザーの二つのグループに大別される。日本国内では、地球深部探査船「ちきゅう」に装備された掘削ライザーがよく知られている。掘削ライザー、生産ライザーともに破壊時の経済的損失、環境への影響は非常に大きなものとなるため、OMAE(The Offshore Mechanics and Arctic Engineering)やISOPE(The International Society of Offshore and Polar Engineers)等の海洋工学に関する主要な国際学会で主要なテーマとして取り上げられている。
ライザー構造は非常に細長いため、局部的な座屈が主要な破壊モードとなる。したがって、これを防止する観点から、常にライザーにテンションが作用する状態となるよう設計することが求められる。近年では高潮流下での運用が増加しつつあり、局部座屈回避の注意点に加えて、ライザーから放出される渦によって励起される渦励振(VIV, Vortex Induced Vibration)によって発生したと考えられる問題が海外でも数例報告されている。ライザー構造の特性から高次の振動モードまで発生する可能性があり、渦励振により励起される振動数1~数Hz程度の振動に対して共振することで、疲労破壊など安全に関わる問題を引き起こす。最近ではこのVIVに注目が集まり、Shell(オランダ)・BP(イギリス)・Chevron(アメリカ)・Petrobras(ブラジル)等の国際石油メジャー、DNV(ノルウェー)等の船級協会、大学機関が連携して研究を進めている。
ライザーのVIV挙動を的確に予測し、設計へ反映する手法については、未だ発展途上の段階にあり、今後のライザー関連分野ではVIVの予測・設計技術の開発が世界的なトレンドになるものと推測される。
本研究では以下のプロセスで、ライザー設計におけるVIV評価手法の構築と知見の拡充を行う。
1. CFDを用いたライザー管の流体評価手法構築
3次元CFDによるライザー管セグメントの流体力評価手法を構築し、水槽実験との比較によってその適用性を検証する。
2. 流れ方向の振動を考慮した流体力データベースの構築
水槽実験とCFDを併用し、流れ方向の振動を考慮した流体力データベースを構築する。
3. ライザー管応答解析手法の拡張と設計重要パラメータの抽出
東大にて開発したLine-3Dを流れ方向の振動を考慮したモデルに拡張し、ライザーのパラメトリックスタディを実施することで、設計に重要なパラメータを抽出する。