その他研究開発(共同研究等)

アレスト特性の評価手法の標準化・規格化に関する研究開発

研究実施期間:2010年11月18日 ~ 2013年06月30日

共同研究者

社団法人日本溶接協会

研究の概要

 大型コンテナ船や溶接構造物(貯槽容器など)の信頼性を確保する上で、脆性破壊の防止は極めて重要である。脆性破壊は、溶接部に存在する欠陥や繰返し荷重によって生じる疲労き裂から発生することが多いが、欠陥を除去することで脆性破壊の発生を完全に防止することはできない。このため、脆性破壊発生に対する対策を講じた上で、脆性破壊が発生してき裂が伝播することも想定し、それを阻止(アレスト)することにより構造物の信頼性を大きく高めることができる。このような二重安全性を実現するためには、脆性き裂伝播に対する構造部材の破壊力学的な評価を行うとともに、鋼材の脆性き裂伝播阻止性能(アレスト特性;Kca)を正確に評価する必要がある。
 最近のコンテナ船の大型化に伴い、船体用鋼板の脆性き裂アレスト特性に対する評価の重要性が増してきたことから、系統的な研究が実施され、2009年に「脆性亀裂アレスト設計指針」(日本海事協会)が刊行された。この指針ではアレスト特性の評価手法も提案され、造船用鋼を対象として既に国内で適用が進んでいる。指針で提案されている評価手法の国際化のためには、試験基準についてさらに詳細な検討が必要である。
 本研究では、試験と解析をすすめ、最終的には国際標準化も視野に入れた形で、アレスト特性評価試験規格案を作成すると共に、脆性き裂伝播挙動に関する基礎的な研究を実施し、溶接構造物における脆性き裂伝播停止に対する合理的な判定方法の確立に対して提案を行うことを目的とする。

1. アレスト特性評価試験方法の標準化のための基礎試験
 「設計指針」から検討を進め、アレスト特性(Kca)評価の高精度化と適用範囲の拡大を図る。

2. アレスト特性評価試験方法規格案の作成
 上記の基礎試験に加えて、数値解析を実施し、さらに従来知見も参照することにより、アレスト特性評価試験方法規格案を作成する。

3. Kcaの簡易推定式の作成
 アレスト特性評価試験は正確ではあるものの、膨大な費用と時間を要するので、より簡便な評価法が望まれている。このために、これまでに蓄積されてきたアレスト特性とシャルピー衝撃特性のデータを収集し、簡易推定式を作成する。

4. ISO規格化提案における課題の検討
 溶接協会規格案策定後のISO規格化を目指し、国際標準化における課題を抽出する。

5. 長大き裂問題解明のための試験と解析
 き裂長さの影響について系統的な実験と数値解析を行い、き裂長さによるき裂先端応力・歪の状態の変化等を計測するとともに、計算モデルによる解析を実施し、長大き裂問題の原因を解明することを試みる。

6. 動的破壊現象の最新知見の整理
 国内外の関係文献を調査するとともに、参加研究者の最新知見について勉強する。上記研究成果について、ワークショップを開催し、関係者に広く情報を公開する。

研究成果報告書

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