その他研究開発(共同研究等)

空気潤滑法の適用船種拡大に関する検討

研究実施期間:2011年10月26日 ~ 2013年08月30日

共同研究者

三菱重工業株式会社

研究の概要

 船舶からの温室効果ガス(GHG:Green House Gas)の排出削減対策については、IMO(国際海事機関)のMEPC(海洋環境保護委員会)において規制の枠組みが議論されてきているが、MEPC62において新たに建造される船舶に燃費規制を導入する条約改正案が採択される見込みである。
 自動車のカタログ燃費と異なり、船舶の燃費は個船毎に異なるものであり、この個別の船舶の燃費性能を示す指標としてEEDI(エネルギー効率設計指標)が付与されることになる。EEDIはトン・マイル当たりに排出されるCO2のグラム数を表すものである。各船のEEDI値はルールで要求される規制値を下回ることが義務付けられるため、エネルギー効率に優れた船舶の技術開発に対する要請は、今後益々大きくなってくる。EEDIの算出にあたり、風力利用、太陽光発電、排熱回収システムなど革新的省エネ技術の効果は機関出力から控除されることになっており、ここで提案する空気潤滑法による主機関の出力削減もその対象とされる。
 三菱重工業では、2010年にモジュール運搬船に空気潤滑システムを搭載し、海上運転において約10%の省エネ効果を確認している。この実船試験における最大の知見は、『空気で船体をきちんと覆うことができれば、摩擦抵抗が推定どおりに減少する』ことが確認できたことである。
 しかしながら、この結果をもってあらゆる船種・船型に対して空気潤滑法が適用可能であるとは断言できない。特に、フェリー、RORO、PCC、コンテナ船など痩せた船型や、VLCC、バルクキャリアーなど大型で喫水が大きい船型については、更なる実船試験による検証が必要である。また、空気潤滑法の背反効果として、プロペラへの空気巻き込みによる船尾振動増加に対する懸念も残っている。
 以上の状況から、タイプの異なる二種類の船舶を対象に空気潤滑システムを搭載して実船実験を行い、海上運転において省エネ効果の確認を行うとともに、設計に関する知見の集約と、懸念事項である船尾振動に対する回避手段の有効性の確認を行うことで、空気潤滑法の適用船種拡大を図り実用化を促進することで、海運業界からの要望に応えることを本事業の目的とする。

1. 船の特徴に応じた空気の吹出し方法の検討と空気供給に関する機器の選定

2. 空気潤滑システム設計
 空気吹出し部のチャンバー・リセス構造、開口部の形状・配置、空気供給の配管、制御システムなどの詳細設計を行う。また、プロペラの起振力と船体振動について検討する。

3. 空気潤滑システム搭載
 建造船に空気潤滑システムの搭載工事を施工する。

4. 海上運転
 海上運転時にシステムON/OFFの2状態で速力試験を行い、到達速力、主機馬力の低減量、ブロワの出力、船体振動などを計測する。

5. 評価
 正味の省エネ効果を算出し、空気潤滑システムの性能評価を行う。同時に船尾振動に関する評価も行う。

研究成果報告書

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