その他研究開発(共同研究等)

高張力鋼溶接部疲労特性向上のための溶接施工法の開発

研究実施期間:2012年05月14日 ~ 2014年05月31日

共同研究者

国立大学法人大阪大学
学校法人長崎総合科学大学

研究の概要

 船舶や海洋構造物は、これまで軽量化のために高張力鋼材の適用が進められ、船舶ハイテン化率も上昇してきているが、現在高張力化は頭打ちの状態にある。その大きな原因として、溶接部の疲労特性が鋼材の高張力化に伴い向上しないことが挙げられる。なかでも、スティフナー角廻し溶接部の疲労強度は母材に比べ顕著に低いため、船体の設計荷重や寿命の向上に著しい悪影響を与えている。また、現在稼働中の船舶において、この角廻し溶接部で多く見られる疲労亀裂は、溶接で補修・補強されているが、二重船底は作業環境としては劣悪なため、極力少ない作業時間が望まれている。
 共同研究者らは、角廻し溶接部疲労特性の著しい向上を可能にする新溶接施工法として、マルテンサイト変態点Ms350℃以下の低変態温度溶接ワイヤーを用い、通常の廻し溶接後、続いて廻し溶接部の先端に少なくとも10mm以上の伸長ビードを置くことを特徴とする手法を見出した。これによって、廻し溶接部および止端位置の特性劣化域に大きな圧縮残留応力の導入ができることを計算シミュレーションと中性子回折で明らかにし、疲労実験でその顕著な向上を確認している。
 しかし、船舶への適用のためには、疲労データの充実および高能率、低コストの視点からの基礎研究も必要である。
 本研究は、基礎研究であり、中型継ぎ手部の作成や疲労試験を条件を絞って実施し、圧縮残留応力や応力集中の計算シミュレーションも併せて行い、高能率化・低コスト化に結びつくキーポイントを把握し、続く実用化実験につなげることを主旨としている。

1. 伸長ビード長さ縮小による、圧縮応力と疲労強度との関係の検討
 これまでの試験は、従来に比べて8倍以上の疲労寿命を確実に達成することを目指したもので、伸長ビード長さ70mmを採用した。本試験では、どこまでビード長を縮小できるか、またスティフナー側脚長の影響も含めて、疲労寿命の向上度合いを計算と試験で把握する。

2. 従来溶材と低変態温度溶材とを最適に組み合わせた伸長ビード溶接施工法の確立
 低変態温度溶材使用量の低減を目指し、スティフナー廻し溶接部に、従来溶材で従来廻し溶接施工した後に、付加的に、低変態温度溶材の最小使用量の伸長ビード溶接でもって、発生する圧縮応力と疲労強度向上を把握する。

3. 補修、補強への適用による稼働船舶の寿命延長技術の構築
 稼働船舶の廻し溶接部補修に、伸長ビード溶接施工法を適用した場合の疲労寿命延長度合いを把握する。

4. 低変態温度溶材の低コスト化の検討
 低変態温度溶材のNi量を10%から5%レベルまで削減し、溶材の低コスト化を図る。

研究成果報告書

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