その他研究開発(共同研究等)

振動成分が重畳した疲労試験方法の開発および疲労強度影響評価の調査研究

研究実施期間:2012年08月01日 ~ 2014年06月30日

共同研究者

国立大学法人大阪大学
ユニバーサル造船株式会社

研究の概要

 船体構造の疲労寿命は、レインフロー法により変動荷重の疲労被害度を計算し、修正マイナー則に従って評価される。船体構造に作用する変動荷重は、波浪変動圧にホイッピングやスプリンギング等に起因する弾性振動応力が重畳した波形になっている。このうち、ホイッピング荷重は、減衰する高周波成分が間欠的に作用する特徴をもち、自動車や鉄道車両に作用する恒常的な重畳波形とは大きく異なる。
 従来は、波浪変動のみ考慮して疲労強度評価がなされてきたが、近年の船舶の大型化に伴い、弾性振動由来の高周波成分が相対的に大きくなったため、欧州の船級協会を中心に弾性振動による疲労被害度も考慮することが検討され始めている。
 高周波重畳応力下の疲労試験の報告例はごく少ない。その大部分は、恒常的な重畳波形下の母材を対象としている。船舶技術研究協会が実施した、高周波成分が減衰する重畳波形下の母材の疲労試験結果によれば、レインフロー法と修正マイナー則は過度に安全側の寿命を推定する傾向がある。しかし、この疲労試験は試験点数がごく少数で、溶接構造の疲労試験も実施されていない。
 すなわち、レインフロー法と修正マイナー則による船体疲労寿命評価は、過度に安全側の推定値を与える可能性があるが、その安全余裕は依然として不明である。弾性振動が船体疲労強度に与える影響を合理的に評価するためには、船体に作用する高周波重畳応力の特徴を備えた変動荷重を用いた溶接継手の疲労試験を多数回実施して実験的知見を蓄積する必要があるが、油圧試験機により溶接継手の高周波重畳疲労試験を実施するには多大な費用と時間を要し、十分な数の疲労試験を実施するのは極めて困難である。
 そこで、本事業では、高周波成分が減衰する重畳応力を受ける溶接継手の疲労試験を、安価かつ短時間で実施する試験方法を開発する。そして、溶接継手の高周波重畳疲労試験を多数回実施して、弾性振動が船体疲労強度に与える影響を合理的に評価する手法を確立することを目的とする。

1. 重畳波形応力を発生させることが可能で、かつ、油圧試験機による場合より大幅に短い時間で溶接継手の疲労試験を実施可能な試験装置を開発する。

2. 定振幅応力、スプリンギングを模擬した恒常的重畳波形応力、ホイッピングを模擬した高周波成分が減衰する重畳波形応力の各々について、溶接継手の疲労試験を実施し、従来法(レインフロー法+修正マイナー則)により評価した疲労寿命と実験結果を比較して、従来法の推定精度を明らかにする。

3. 弾性振動が船体疲労強度に与える影響を合理的に評価するための疲労被害度計算方法を開発する。

4. 上記知見の、関連する規則等への適切なフィードバックを図る。

研究成果報告書

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