その他研究開発(共同研究等)

ライザーのVIV対策技術に関する実用化研究

研究実施期間:2013年10月01日 ~ 2015年09月30日

共同研究者

三菱重工業株式会社
国立大学法人東京大学
独立行政法人海洋研究開発機構

研究の概要

 ライザーは、石油開発や地球の科学調査において海底を掘削するために用いられる掘削ライザーと、海底油田から採取した原油を海面まで持ち上げるために用いられる生産ライザーの二つのグループに大別される。日本国内では、地球深部探査船「ちきゅう」に装備された掘削ライザーがよく知られている。掘削ライザー、生産ライザーともに破壊時の経済的損失、環境への影響は非常に大きなものとなるため、OMAE(The Offshore Mechanics and Arctic Engineering)やISOPE(The International Society of Offshore and Polar Engineers)等の海洋工学に関する主要な国際学会で主要なテーマとして取り上げられている。
 ライザー構造は非常に細長いため、局部的な座屈が主要な破壊モードとなる。したがって、これを防止する観点から、常にライザーにテンションが作用する状態となるよう設計することが求められる。近年では高潮流下での運用が増加しつつあり、局部座屈回避の注意点に加えて、ライザーから放出される渦によって励起される渦励振(VIV, Vortex Induced Vibration)によって発生したと考えられる問題が海外でも数例報告されている。ライザー構造の特性から高次の振動モードまで発生する可能性があり、渦励振により励起される振動数1~数Hz程度の振動に対して共振することで、疲労破壊など安全に関わる問題を引き起こす。最近ではこのVIVに注目が集まり、Shell(オランダ)・BP(イギリス)・Chevron(アメリカ)・Petrobras(ブラジル)等の国際石油メジャー、DNV(ノルウェー)等の船級協会、大学機関が連携して研究を進めている。
 ライザーのVIV挙動を的確に予測し、設計へ反映する手法については、未だ発展途上の段階にあり、今後のライザー関連分野ではVIVの予測・設計技術の開発が世界的なトレンドになるものと推測される。これらの課題について、平成22~24年度に実施された「ライザーのVIV評価技術の構築及び知見の拡充」にて、より実際の現象に近いモデルを導入した新たなVIV評価技術を構築するとともに、強海流/潮流域を対象とした流体力DBを取得するための実験・CFD技術を構築した。一方で、これまでの成果として得られた上記技術をライザーのVIV対策へと実際に展開していくには、ライザーの実運用を踏まえて技術課題を明確化する必要がある。そこで本研究では、これまでの研究で得られた知見を活用しつつ、ライザーの実運用を想定した新たなVIV対策を提案・実用化していくための基礎的な調査・研究を行う。
 本研究ではライザーやドリルパイプなど水中線状構造物の実運用に関わる諸課題を調査し、これを体系的に整理する。この諸課題に対して、これまでの成果を活用した技術検討を行い、新たなVIV対策を提案・実用化していくための体系的な知見として取り纏める。具体的な実施項目は以下のとおりである。

1. ライザーの実運用における諸課題の整理
 ライザーのオペレーションに関わる実運用のフロー等の諸情報を調査・整理し、実運用上の技術課題をVIV対策の観点から検討・整理する。
2. VIVの検討やVIV対策の計画におけるLINE-3D_VIVの適用性評価
 現状用いられているVIVの評価・検討方法について、予測精度等の観点での信頼性を評価する。また、新たな評価方法として平成22~24年度の共同研究で改良を行ってきたVIV解析コード「LINE-3D_VIV」の適用性を評価する。
3. 新形式ライザーのVIV対策技術の検討
 ライザーに限らず、構造物全般における既往のVIV対策技術や新規技術について、公開文献や特許を調査・評価し、ライザーのVIV対策に有用と考えられる公知技術を抽出・整理する。
4. LINE-3D_VIVの運用方法の検討
 いままで改良を行ってきたVIV解析コード「LINE-3D_VIV」について、ライザーの実運用に沿った汎用的な利用を可能とするツール化を行い、マニュアル及びサポートの方法を検討する。
5. 研究成果まとめ
 本研究で得られた成果を体系的に整理して、ライザーのVIV対策技術に関わる技術開発の方向性を検討する。また、将来のVIV対策技術について、あるべき姿を明確化して、技術開発の方向性に関する指針を得る。

研究成果報告書

その他研究開発(共同研究等)に戻る