研究成果の発表

波浪予報に基づく船体応答の長期予測とコンテナ船への適用に関する研究報告

研究報告者

一般財団法人日本海事協会 技術研究所
藤本 航、栁本 史教、石橋 公也

研究の概要

コンテナ船の短期航海では、波浪予報を活用することで、より柔軟で効率的な積付けが可能になります。本研究では、予報の不確実性を考慮しながら、船体動揺(ロール・ピッチなど)を安全に予測する方法を開発しました。実船データを使った検証では、提案した方法が実海域での船体動揺を安全側に評価することが確認されました。本研究の成果は、「気象海象予報に基づく海上貨物の安全性に関するガイドライン (第1.0版)(2025年9月発行)」の技術的背景として位置付けられ、コンテナ船の積付け効率向上と安全性確保に寄与します。


本研究は、短期航海における船体応答の再現期間評価を目的に、以下の技術的課題に取り組みました。

  1. 1. 波浪予報の不確実性評価モデル
    Natskårモデル(波浪予報と実測値の誤差を統計的に表すモデル)を修正し、最大有義波高の誤差分布を対数正規分布で表現する手法を提案しました。これにより、予報期間(最大120時間)に応じた誤差特性を定量化し、世界各海域での予報精度を検証しました。

  2. 2. 船体応答の長期予測(再現期間25年)
    簡易化した応答振幅演算子(RAO)を用いて、ロール角・ピッチ角・ピッチ角加速度の再現期間25年に基づく予測を実施しました。波浪予報値とERA5データを組み合わせ、短期航海における設計有効波高を算定しました。

  3. 3. 設計荷重低減係数の提案
    北大西洋基準値との比率を簡易式で近似し、最大予報有義波高に基づく補正係数を提案しました。

  4. 4. 実船データによる検証
    VLCS(超大型コンテナ船)605航海分の計測データを用いて、提案手法の安全性を確認しました。結果として、予測値は実測値を保守的に評価し、目標リスクレベル(10⁻⁴/航海)を満たすことを確認しました。

10月2日に公開済みの関連レポート:「海象予報を用いたコンテナ積付設定の有効性及び安全性に関する研究( https://www.classnk.or.jp/classnk-rd/report/2025/007.html)」も合わせてご参照ください。


掲載ジャーナル:Ocean Engineering, Vol. 339, 2025, Article No. 122072

論文タイトル: Long-term prediction of ship responses considering global scale wave forecast uncertainty and applications for container ships

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