その他研究開発(共同研究等)

高張力鋼溶接部疲労特性向上のための溶接施工法の開発(その2)

研究実施期間:2013年07月18日 ~ 2015年04月30日

共同研究者

国立大学法人大阪大学
学校法人長崎総合科学大学
今治造船株式会社
株式会社三和ドック
三菱重工業株式会社

研究の概要

 船舶や海洋構造物では、軽量化のために高張力鋼材の適用が進められ、船舶ハイテン化率も上昇してきているが、高張力化は頭打ちの状態にある。その大きな原因として、溶接部の疲労特性が鋼材を高張力化してもあまり向上しないことが挙げられる。特に、スチフナ先端の角廻し溶接部の疲労強度が母材に比べ顕著に低いため、船体の設計荷重や寿命の向上に著しい悪影響を与えている。さらに、稼働中の船舶において、この角廻し溶接部で多く見られる疲労亀裂は、溶接で補修・補強されているが、特に二重船底内での溶接施工は、劣悪環境のために苛酷であり、極力少ない作業時間が望まれている。
 前フェーズ(高張力鋼溶接部疲労特性向上のための溶接施工法の開発)の成果として、船体用降伏点40kgf/mm2級高張力鋼板(AH40, 板厚20mm)を使用して、スチフナ先端部の角廻し溶接部の疲労試験を実施し、10Cr-10Ni系LTTワイヤを用いて止端部に圧縮残留応力を生成させ、かつ新規提案の伸長ビード法を適用して止端部の応力集中を低減した場合において、疲労亀裂は、従来のビード止端部ではなく、スチフナ先端直下の、主板とスチフナ材との未溶着部先端から発生・生長・進展したものであることが確認でき、従来の廻し溶接施工法より、疲労寿命が2.5~3.2倍延びることが確認できた。したがって、スチフナ先端隅肉角廻し溶接部位で想定される応力集中を適正に小さくするように溶接施工法を改良すれば、疲労寿命はさらに延びるものと判断できた。
 本研究の目的は、次の2点である。
1. 新造船における疲労強度重要箇所の隅肉角廻し溶接部への実用的な伸長ビード溶接施工法の開発:疲労強度重要箇所であるスチフナ先端部の隅肉角廻し溶接部を対象に、疲労特性の著しく優れる実用的な伸長ビード溶接施工法を開発する。この新施工法により、船体局部構造疲労特性の顕著な向上を図り、他国にない、低燃費で安全性の高い、高性能な新船舶建造の基盤技術に貢献する。
2. 就航船における疲労強度向上対策(例えば損傷対策や高付加価値船での延命対策等)への適用を目的とした実用的な新補修溶接施工法(超音波ピーニング施工等の代替手法)の開発:就航船の補修、補強に実用的な新補修溶接施工法を適用することにより、疲労寿命の大幅な延伸を実現し、疲労亀裂の減少と定期補修作業の軽減を図る。

研究成果報告書

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