研究紹介

直接荷重解析の推定精度検証のための水槽試験

本会が規則開発のために使用する直接荷重解析の精度検証のため、NKオリジナルの仮想船型である14,000 TEUのコンテナ船とVLCCを対象に水槽試験を実施しました。水槽試験では、船体運動、波浪荷重、船体表面圧力、船首船尾加速度など、規則に記載の荷重項目の多くを計測し、これらと計算結果を比較してその精度の検証を行いました。これらの検証を通して、本会が使用する直接荷重解析のソフトの推定値の妥当性が確かめられました。本研究で取得した水槽試験データはOPEN DATAにて公開しております(こちら)。本会が発行するガイドラインに準じて直接荷重解析を実施する場合に、本研究で取得した水槽試験データをベンチマークデータとしてご使用いただけます。

アンモニアガス拡散解析の信頼性向上に向けたガス拡散実験研究と数値解析の検証

アンモニア燃料船の安全設計およびリスク評価の高度化には、ガス拡散挙動の適切な把握と数値解析の信頼性向上が重要となります。本会では、船舶機関室を模擬した閉鎖空間において純アンモニアガスを放出する実験を実施し、レーザーラマン分光法を用いた多経路計測により、ガス濃度分布の時間変化および空間構造を定量的に取得しました。また、取得した実験データを用いて数値流体力学(CFD)による数値解析結果と比較し、ガス拡散解析モデル・手法の検証(Verification & Validation, V&V)に関する検討を行っています。
本研究では、アンモニアガス拡散解析の信頼性評価の基盤となるベンチマークデータを整備するとともに、解析の適用範囲および不確かさを整理し、合理的な規則・ガイドライン整備への活用を目指しています。なお本研究は、九州大学 篠田岳思名誉教授(実験計画・監督)、株式会社四国総合研究所様(実験実施・ガス濃度計測)、公立諏訪東京理科大学 今村友彦教授(CFD)のご協力のもと進めております。

推進システムデジタルツインと運航データ解析による最適運航支援

近年、センシング技術の高度化や船陸間通信の発達により、機関室データの収集が容易となり、経年劣化や故障検出を通じた保守管理の最適化が進められています。一方で、シミュレーションによって機関性能や推進性能を再現する取り組みは存在するものの、主機・プロペラ・船体抵抗の連成を包括的に考慮した事例は限られており、連成解析には膨大な計算時間を要する点が課題となっていました。
本研究では、船舶の安全性向上と燃費改善を実現する最適運航支援を目的として、船体・プロペラ・機関を統合的に扱う 1D シミュレーションモデルの開発と、就航船データの分析を進めています。

燃料弁の状態監視に関する研究

ディーゼル主機関における燃料弁の不具合は、燃焼悪化による出力低下・燃費増加だけでなく、シリンダカバーリフトといった危険な事象が発生するなど環境面・安全面と共に影響を及ぼします。本研究では、FTA(Fault Tree Analysis)による燃料弁の不具合の洗い出しを行い、その不具合を意図的に反映した燃料弁を複数用意し、テストエンジンでの燃焼試験を通じて、エンジンへの影響について考察しました。結果として、筒内圧や燃料噴射圧の監視は一般監視では検知できない燃焼悪化を検出することが可能であり、故障プロセスの解明に有効であることを確認しました。

商船の水中騒音低減のための研究

国連生物多様性条約及び国連公海等生物多様性協定の方向性に沿ったIMO船舶水中騒音ガイドライン(2024年11月)に基づいて、各国において実施される実証試験等を通じた議論を深めるための経験蓄積期間(EBP)が2028年末まで設定されています。今後の規制のレベルに関わらず個船のベースラインの 水中騒音予測または計測が不可欠と考えられます。本会ではステークホルダーと協力し、浅海域計測に係る定量的リスクを評価するための実船計測に向けた技術的検討を行う共に、実海面計測に依らないオンボードセンサーによる水中騒音予測に関する検討を進めております。

船舶サイバーリスクの構造的分析と多層防御アーキテクチャ ~ 船舶サイバーセキュリティの「考え方」を体系化する ~

近年の船舶システムは、航海・機関・通信などの機能がネットワーク化され、従来のように船内で完結していたシステムから、外部との接続を前提とする複雑なシステムへと移行しつつあります。本研究では、この構造変化を踏まえて船舶サイバーリスクを分析し、脅威候補の抽出、リスクの定量評価、多層防御の設計を一体的に扱う評価枠組みを構築します。GPS妨害や遠隔保守経路からの侵入といった具体例を通じて、個別対策の列挙にとどまらず、リスクの発生源・影響・対策を体系的に関連づけて評価できる点が特徴です。
こうした統合的な評価枠組みに基づくことで、船舶全体の安全性を確保するために必要な要求事項を明確化でき、結果として、将来の船舶システムに求められる新たな技術基準のあり方を提示することが可能となります。

自動運航船の安全性評価手法の構築

近年、海上輸送の効率化やより安全な運航の実現に向けて、自動運航技術への期待が高まっています。本研究では、自動運航船の安全性を客観的に評価するため、幅広い段階にわたる取り組みを通じた安全性評価手法の構築を進めています。具体的には、AIカメラやセンサフュージョンといった状況認識技術の調査研究、避航アルゴリズムや自動離着桟アルゴリズムを評価するためのシミュレーションシナリオの整備、さらにシミュレーションの基盤となる操縦運動モデルの開発など、多岐にわたります。こうした取り組みは本会ガイドライン「自動運航、自律運航に関するガイドライン」に適宜反映しており、安全な自動運航船の社会実装に向け、技術的基盤の整備を目指しています。

船舶の損傷・海難に関する調査活動

本活動では、船級船で発生した損傷の情報を、日々の検査記録から収集・分析することで、現場検査へのフィードバックや関連規則の検証を行っております。また、必要に応じて、構造面、材料面での詳細な調査を実施し、原因の推定を行うことで、船舶の安全性・信頼性の向上を目指しています。特に近年では、全般的に損傷が減少している一方で、環境規制強化を背景とする損傷が確認されております。また、労働環境改善の観点から、運航中に発生するオペレーション起因の事故についても注目が集まっております。これら最新のトレンドも含め、活動で得られた知見は、弊会規則に反映するとともに、ご要望に応じ、お客様へもご提供しています。

お問い合せ先

一般財団法人 日本海事協会 技術研究所
Tel: 03-5226-2737
E-Mail: ri@classnk.or.jp