バイオ燃料
船舶におけるバイオ燃料の使用に関する取り扱い
バイオ燃料は、植物油を主とする生物体(バイオマス)を原料として製造される再生可能な燃料です。硫黄酸化物を排出しない上、燃焼時に排出されるCO2については、原料となる植物が成長過程で大気中のCO2を吸収することから、「カーボンニュートラル」な燃料とされています。また、燃料の種類によっては、既存のディーゼルエンジンの仕様を変更せずに、船舶用燃料として使用が可能(ドロップイン燃料)というメリットがあります。
そのため最近、バイオ燃料をトライアルで使用するケースが増えてきており、本会においてもバイオ燃料に関する問い合わせが増加しています。船舶でバイオ燃料を使用する際の安全かつ適正な運用をサポートすべく、今般、これらに関するご質問及び弊会の回答を次のとおり取りまとめました。また、バイオ燃料についての基礎知識をまとめた資料を最下段に掲示致しましたので、併せてご参考にしていただければ幸いです。
船舶におけるバイオ燃料の使用に関するご理解のために
No. | 質問 | 回答 | ||||||||||||||||
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1 | よく使うバイオ燃料はどんなもの? | ディーゼルエンジンで使用を試みられているバイオ燃料は以下の3種類が挙げられます。
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2 | バイオ燃料を使用した場合のCO2排出の取り扱いに関する条約規定はあるか? | バイオ燃料は燃焼させる際にはCO2を排出しますが、原料となる植物等の成長過程で大気中のCO2を吸収しているため、実質的なCO2排出量は差し引きゼロであるとみなす考え方(カーボンニュートラル)があります。但し、バイオ燃料の使用による船舶からのGHG排出削減効果(IMO EEDI及びEEXI計算上のCO2換算係数並びにIMO DCS及びCIIの計算上のCO2排出係数)への考慮に関しましては、IMOにおいてライフサイクルにおけるバイオ燃料のCO2削減効果を評価する手順を開発中であり、IMO DCS及びCIIの扱いについては暫定ガイダンス(MEPC.1/Circ.905)が発行されております。暫定ガイダンスの詳細はテクニカルインフォメーションTEC-1307を参照ください。今後の状況に関しましては、随時お知らせしていく予定です。 | ||||||||||||||||
3 | バイオ燃料の使用に関して適用されうる条約規定は? | 通常の石油由来の燃料油でも適用される条約規定(たとえばSOLASの引火点の規定やMARPOL Annex VI第14規則の硫黄分の規定など)や、MARPOL Annex VI 第18.3規則の燃料の品質に関する規定などがあります。このMARPOL Annex VI 第18.3規則において、石油由来の燃料油については、MARPOL Annex VI 第18.3.1規則が適用されます。一方、石油精製以外の方法で得られる燃料油については、同18.3.2規則が適用されます。バイオ燃料に関しては、混合比及びエンジンの改造/調整等の条件に応じてMARPOL Annex VI 18.3.1もしくは18.3.2規則が適用されます。 |
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4 | バイオ燃料にMARPOL Annex VI 第18.3.2.2規則(「NOx規制値を超過しないこと」の確認)が適用される条件は? | バイオ燃料を使用する場合に MARPOL 条約附属書 VI 第 18.3.1 規則及び第 18.3.2規則をどのように適用するのかを明確化した統一解釈がMEPC78にて承認されております。さらにMEPC79では、その統一解釈の適用範囲に合成燃料(synthetic fuel)を加えた修正案が承認されております。その統一解釈(MEPC.1/Circ.795/Rev.7 パラグラフ13)の概要は以下の通りです。 1. バイオ燃料または合成燃料が 30%以下の混合燃料を利用する場合は、MARPOL Annex VI 第18.3.1規則が適用される。(すなわち、MARPOL Annex VI 第18.3.2.2規則の「当該燃料を使用することによりNOx規制値を超えないこと」とする要件などは課されない。) 2. バイオ燃料または合成燃料が 30%超の混合燃料を利用する場合は、MARPOL Annex VI 第18.3.2が適用される。同18.3.2.2規則の「当該燃料を使用することによりNOx規制値を超えないこと」とする要件の取り扱いを以下の通りとする。 (i) 承認済みテクニカルファイル(原動機取扱手引書)におけるNOx基幹部品(critical components)または設定・運転値に同手引書記載の範囲を超える変更がない場合、NOx規制値を超えないことの評価をせずに当該燃料の使用が認められる。 (ii) 承認済みテクニカルファイル(原動機取扱手引書)におけるNOx基幹部品(critical components)または設定・運転値に同手引書記載の範囲を超える変更がある場合、NOx規制値を超えないことの評価が要求される。同評価はNOxテクニカルコード 2008 の 6.3 に従った船内簡易測定法等による確認でよく、かつ、規制値+10%までの許容幅も認められる。 |
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5 | 上記No.4記載の統一解釈は、どのようなバイオ燃料、合成燃料に適用されるか? | 1. バイオ燃料とはバイオマス由来の燃料のことを指し、当該統一解釈上では以下のような燃料が主なバイオ燃料として挙げられています。 (i) 廃食油 (Processed used cooking oil) (ii) FAME (脂肪酸メチルエステル:Fatty Acid Methyl Esters) (iii) FAEE (脂肪酸エチルエステル:Fatty Acid Ethyl Esters) (iv) SVO (ストレートベジタブルオイル:Straight Vegetable Oils) (v) HVO (水素化バイオ燃料:Hydrotreated Vegetable Oils) (vi) BTL(グリセロールまたはその他バイオマス由来の液体燃料:Glycerol or other biomass to liquid type products) 2. また、合成燃料とは、石油由来の留出油と類似した組成を有し、合成または再生可能資源由来の燃料油を指します。 | ||||||||||||||||
6 | バイオ燃料を使用する場合の注意事項とその対策は? | 特にFAMEは時間経過により様々な影響が起こる燃料であるため、適切な対策を取り、補油後は出来る限り早期に使い切ることが重要です。
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7 | バイオ燃料を使用する際の推奨事項は? | バイオ燃料の使用前に、使用するバイオ燃料の適性や機器の改造/調整の要否についてエンジン及び燃料供給系統の機器メーカに確認することを推奨します。 |
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8 | ClassNKの問い合わせ先は | バイオ燃料全般に関し、機関部が窓口となります。 一般財団法人日本海事協会 (ClassNK)本部 管理センター別館機関部 住所: 東京都千代田区紀尾井町3-3(郵便番号 102-0094) Tel.: 03-5226-2022 Fax: 03-5226-2024 E-mail: mcd@classnk.or.jp |