バイオ燃料

船舶におけるバイオ燃料の使用に関する取り扱い

 バイオ燃料は、植物油を主とする生物体(バイオマス)を原料として製造される再生可能な燃料です。硫黄酸化物を排出しない上、燃焼時に排出されるCO2については、原料となる植物が成長過程で大気中のCO2を吸収することから、「カーボンニュートラル」な燃料とされています。また、燃料の種類によっては、既存のディーゼルエンジンの仕様を変更せずに、船舶用燃料として使用が可能(ドロップイン燃料)というメリットがあります。

 

そのため最近、バイオ燃料をトライアルで使用するケースが増えてきており、本会においてもバイオ燃料に関する問い合わせが増加しています。船舶でバイオ燃料を使用する際の安全かつ適正な運用をサポートすべく、今般、これらに関するご質問及び弊会の回答を次のとおり取りまとめました。また、バイオ燃料についての基礎知識をまとめた資料を最下段に掲示致しましたので、併せてご参考にしていただければ幸いです。

船舶におけるバイオ燃料の使用に関するご理解のために

No. 質問 回答
1 よく使うバイオ燃料はどんなもの?

ディーゼルエンジンで使用を試みられているバイオ燃料は以下の3種類が挙げられます。

①SVO(粗バイオ燃料:Straight Vegetable Oil) ②FAME(脂肪酸メチルエステル:Fatty Acid Methyl Ester) ③HVO(水素化植物油:Hydrotreated Vegetable Oil)
製造方法 菜種・パーム・大豆から抽出された純植物油 植物油、廃食油または動物性油脂などをエステル交換反応させて生成 脂肪または植物油から水素化精製法によって精製
CO2 低減効果、コスト エステル化処理、または水素化の過程がないことから、FAMEやHVOに比べて良好 エステル化処理により、SVOに劣る 水素化処理により、SVO及びFAMEに劣る
燃料使用時の特徴 原料によって品質が異なるが、軽油(MGO)と比べて動粘度や流動点が高く要加熱、また酸化安定性への配慮が必要 SVOと同様の特徴をもつものの、動粘度については軽油(MGO)相当 軽油(MGO)と同等であることから既存の設備を改修すること無く使用可能
2 バイオ燃料を使用した場合のCO2排出の取り扱いに関する条約規定はあるか?

バイオ燃料は燃焼させる際にはCO2を排出しますが、原料となる植物等の成長過程で大気中のCO2を吸収しているため、実質的なCO2排出量は差し引きゼロであるとみなす考え方(カーボンニュートラル)があります。但し、バイオ燃料の使用による船舶からのGHG排出削減効果(IMO EEDI及びEEXI計算上のCO2換算係数並びにIMO DCS及びCIIの計算上のCO2排出係数)への考慮に関しましては、IMOにおいてライフサイクルにおけるバイオ燃料のCO2削減効果を評価する手順を開発中であり、現在のところ定められておりません。今後の状況に関しましては、随時お知らせしていく予定です。

3 バイオ燃料の使用に関して適用されうる条約規定は?

通常の石油由来の燃料油でも適用される条約規定(たとえばSOLASの引火点の規定やMARPOL Annex VI第14規則の硫黄分の規定など)や、MARPOL Annex VI 第18.3規則の燃料の品質に関する規定などがあります。このMARPOL Annex VI 第18.3規則において、石油由来の燃料油については、MARPOL Annex VI 第18.3.1規則が適用されます。一方、石油精製以外の方法で得られる燃料油については、同18.3.2規則が適用されます。バイオ燃料に関しては、混合比及びエンジンの改造/調整等の条件に応じてMARPOL Annex VI 18.3.1もしくは18.3.2規則が適用されます。

4 バイオ燃料にMARPOL Annex VI 第18.3.2.2規則(「NOx規制値を超過しないこと」の確認)が適用される条件は?

バイオ燃料を使用する場合に MARPOL 条約附属書 VI 第 18.3.1 規則及び第 18.3.2規則をどのように適用するのかを明確化した統一解釈がMEPC78にて承認されております。その統一解釈の概要は以下の通りです。


1. バイオ燃料が 30%以下の混合燃料を利用する場合は、MARPOL Annex VI 第18.3.1規則が適用される。(すなわち、MARPOL Annex VI 第18.3.2.2規則の「当該燃料を使用することによりNOx規制値を超えないこと」とする要件などは課されない。)

2. バイオ燃料が 30%超の混合燃料を利用する場合は、MARPOL Annex VI 第18.3.2が適用される。同18.3.2.2規則の「当該燃料を使用することによりNOx規制値を超えないこと」とする要件の取り扱いを以下の通りとする。

    (i) 承認済みテクニカルファイル(原動機取扱手引書)におけるNOx基幹部品(critical components)または設定・運転値に同手引書記載の範囲を超える変更がない場合、NOx規制値を超えないことの評価をせずに当該燃料の使用が認められる。

    (ii) 承認済みテクニカルファイル(原動機取扱手引書)におけるNOx基幹部品(critical components)または設定・運転値に同手引書記載の範囲を超える変更がある場合、NOx規制値を超えないことの評価が要求される。同評価はNOxテクニカルコード 2008 の 6.3 に従った船内簡易測定法等による確認でよく、かつ、規制値+10%までの許容幅も認められる。

5 バイオ燃料を使用する場合の注意事項とその対策は?

特にFAMEは時間経過により様々な影響が起こる燃料であるため、適切な対策を取り、補油後は出来る限り早期に使い切ることが重要です。

注意事項

推奨される対策

原料の植物油脂にバクテリアなどの微生物が混入しており、タンク中で発生する遊離水分中で増殖しやすい傾向にある。 タンク内の水の定期的な除去、またタンク加熱により、微生物の発生を抑制させる。
炭素数が多いことから、軽油(MGO)と比較して低温での流動性が低くなる特徴があり、低温環境下でのワックス化による移送不能やフィルターの目詰まりが発生する可能性がある 貯蔵・移送温度に注意し、定期的にストレーナーやフィルターの点検・洗浄を実施する。
洗浄性に優れているため、切り替え時にタンクや配管内面に付着した堆積物が剥離し、フィルター目詰まりを引き起こす可能性がある。 予めタンク・配管の洗浄を実施することでリスクを軽減させる。
酸化安定性が低いため保管期間が長くなるほど酸化劣化により有機酸やスラッジ(劣化物)が生成され、フィルターの目詰まり、金属製材料の腐食、摺動部品の損傷につながる可能性がある。 酸化防止剤にて劣化を防ぐ。
ゴムへの浸透性が高く、ゴム製部品を膨潤させる可能性がある。 使用部品の耐油性を考慮する。
6 バイオ燃料を使用する際の推奨事項は?

バイオ燃料の使用前に、使用するバイオ燃料の適性や機器の改造/調整の要否についてエンジン及び燃料供給系統の機器メーカに確認することを推奨します。

7 ClassNKの問い合わせ先は

バイオ燃料全般に関し、機関部が窓口となります。

一般財団法人日本海事協会 (ClassNK)
本部 管理センター別館機関部
住所: 東京都千代田区紀尾井町3-3(郵便番号 102-0094)
Tel.: 03-5226-2022
Fax: 03-5226-2024
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